PERSON|株式会社イチーナ

商品部  稲垣美和

本社商品部で手袋のサンプル作りや、ニットや手袋を作るための機械のプログラミングから、OEMに関する対応、生産管理などを幅広く担当。仕事、会社への想いをインタビューしました。

ゴールを自分で定めているからこそ、スピード感を持って駆け抜けられる

PERSON|株式会社イチーナ

コロナ禍のマスク作り、1週間で製品化を実現した背景とは

ーー企画担当でありながら、幅広いお仕事を担当されています。どんな仕事をされているのか具体的にお聞かせください。

稲垣:企画営業の担当者から「今度はこういう企画をしたい」という意向だったり、営業先から「こういうものを作りたい」という要望を受けた時に、どの工場で作れるか、それを作るための素材はどこで手に入れられるか、必要なものを探して、実際に作れるかどうかを検討し、形にしていく仕事をしています。

ーーマスクが不足したコロナ禍では、手袋やニットだけではなく、マスクの生産にも乗り出したと聞きました。

稲垣:コロナ禍の最初の頃にはマスクが不足し、市場からマスクが消えてしまったことがありました。その時に、「自社の機械を使ってマスクを作れないか」という話が出始めましたが、量産できるかどうか、という不安要素がありました。でも、ものづくりにおいては、一番最初に売り出したところが1番をとることができます。そこで私は「こういうものを作ります」という仕様書を自分で作り、量産の実現性を探りました。量産できるという確信はすぐに持てたので、会社に「これはもうすぐに出した方がいいです」と伝えてOKをいただき、構想から1週間で発表、販売までこぎつけることができました。

ーー作ろうと決めて1週間で販売とは、ものすごいスピード感ですね。

稲垣:一般的な会社の場合は、企画担当者が仕様書を書いて素材やサイズを指定し、それを元に生産工場でサンプルを作ります。出来上がったサンプルは企画担当者に見せて「これでいいですか?」と確認し、「ここは、こうした方がいい」「素材を変えた方がいいのでは」など何度もやり取りを繰り返して、ようやく完成品へと近づけていくことができます。でも、今回マスクを作った時には、私が「こういうものを作ります」と仕様書を作り、自分で機械のプログラミングをして、自分でサンプルを作りました。普通なら何人もの手をかけてやる工程を一人でやったからこそ、これだけのスピードで完成させることができました。誰かが描いたゴールではなく、自分で定めたゴールを見ながら進められたのが大きかったですね。

ーー聞いていると何の苦労もなく出来上がったような印象を受けますが、実際はどうだったのでしょう。

稲垣:手袋を作っている会社が手袋ではないものを作ろうとする時には、当然ながら苦戦します。でも、「こういうものを作るならこの素材がいい」とか、「ここはこうした方がいいのでは」と判断していくことができたのは、さまざまな手袋やニット製品を作ってきた経験があったからです。マスクは、新しいライフスタイルニットブランド「ThinKniT」で作り販売しましたが、これまでやってきたことを活かすことができたからこそ、他社よりもいいものができました。実際にインターネットで販売を始めると、ニット製であること、そして繰り返し使えることから人気となり、秒で売り切れました。

PERSON|株式会社イチーナ

自由度が高いと、裁量も責任も大きくなる、だからこそ、いいものができた時の喜びはもっと大きくなる

ーー他社では何人もの手がかかる企画、プログラミング、サンプル制作を全て担当されたりしているわけですが、与えられている裁量が大きいからこそ、やり甲斐も大きくなっているのではないでしょうか。

稲垣:手袋やセーターなどのニットの場合は、すでに出来上がっている生地を裁断して作る服とは違い、糸から製品が出来上がります。つまり、糸の選定の部分から専門知識が必要になるんです。でも、素材を選ぶところから製品として出来上がるところまでの全てを自分で担当し、スケジュールを立て、その工程を見ていけるからこそ、大きなやり甲斐を感じますね。そして、任せてくれるだけでなく、そこに自由度の高さがあるのもイチーナならではだと思います。もちろん、自由だからこ責任も伴ってきますし、決められたルールがあまりないということは、経験なしでは難しい面もあるとは思います。でも、先方の要望を聞きいて製品に反映させ、うまくすり合わせをしながら、納得してもらえるものができた時は本当に嬉しいですね。

ーーこれからは、どんなことに取り組んでいきたいですか。

稲垣:東かがわは手袋の産地ではありますが、かなりニッチな産業でもあります。私自身、すごく狭い業界の知識しかないので、手袋以外の繊維業の産地のメーカーさんのやり方を勉強したり、繊維業の他の工場さんともいろいろ協力をしながら、面白い取り組みやものづくりをしていきたいと思っています。

Interviewer・Writer  平地紘子